一般例会No.356

(ベ-シック登山No.24)近江・猪の鼻ヶ岳(508.1m)

概要

『天然記念物のホンシャクナゲ群落と猪の鼻ヶ岳(イノハナ)ハイキング。』

日時

2014年4月26日(土)

天候

晴れ

担当

紀伊埜本節雄、大石隆生

集合

JR大阪駅中央改札口 7:50集合(新快速米原行き乗車、近江八幡下車、駅南口より北畑口行きバス乗車)

行程

上音羽バス停~鎌掛峠~シャクナゲ渓谷~展望台下~猪の鼻ヶ岳~鎌掛峠~上音羽バス停

参加者

青木義雄、堀木宣夫、杉本栄子、寺島直子、岸田暎子、谷村洋子、近藤さとみ、安本嘉代、池田える子、藤田喜久江、和田都子、片山純江、寄川都美子、山下登志子、佐藤敏子 ・・・ 計17名

JR近江八幡駅発9:20のバスで北畑口行に乗車、約1時間で上音羽に着く。正面奥(東)に見えるは綿向山(例会で実施済み)10:13

集落のはずれでは、正面(南)に本日登る予定の猪の鼻ヶ岳(イノハナ)が姿を現す。参加者は17名、ワクワクするような五月晴れである。

小さな集落には、由緒あるであろう簡素で風格のあるお寺が2社、村道を挟んで建っていた。その訳は、少し寄り道をしたこの音羽城跡にある。

青空の下、城跡の片隅に藤棚の花が鮮やか、しかし寂しげに咲いていた。ここはかつての日野蒲生氏の室町時代の居城である。

本道に戻り、音羽集落から鎌掛峠(カイガケ)を経て「石楠花渓谷」の入り口に到着。ただしこの間、車はほとんど通らないが舗装路である。11:23

石楠花の群落は、この谷を南東1キロ程上がり、さらに東に向かう支谷の北斜面に見られる。尤も遊歩道が整備されているので迷うことはない。

欅の芽吹きが美しい。丁度この日(4/26)から5月6日まで石楠花の開花期間中は入谷者に保全協力金が徴収される。

遊歩道から紛れもないホンシャクナゲの群生が見られる。標高300m程の北斜面である。雑木の繁殖を防ぐなど、温暖化のなかの保全は難しかろう。

ホンシャクナゲである。咲き揃う前の清楚な色合いと、その姿はほんとうに美しい。今日の喜びのひとつは確かにこれで頂いた。

シャクナゲ渓谷の入口にある掲示板。鑑賞を目的に訪れる人は、自家用車の利用が大半で、ここから山に向かう人は皆無である。

遊歩道を通過してそのまま猪の鼻ヶ岳への第2ラウンドが始まる。踏み跡が続くとの情報だが、実際は朽ちた鹿道と化している。

藪を踏み分ける中で、どうやら昼食を摂れる場所に出会う。誰かが落葉のなかに鹿の角を見付けた、自然に還った里山の風景である。12:15

ルートは一面の雑木帯で見通しが効かず、地図、地形、方角を頼りに通過出来そうな斜面を適当に選び山腹を捲く宝殿林道に出た。予定ルートに対して当たらずとも遠からずの結果である。13:35

林道を1キロばかり西に辿ると、主尾根の鞍部で林道が大きく屈曲している。2人組の登山者が藪の中から突然現れた。シャクナゲ谷に降りたいと尋ねられたが、無理せずこのまま林道を下るように勧めた。

林道の鞍部から北西に続く尾根を山頂に向かう。踏み跡は比較的明瞭だが、倒木や落葉がそれを覆い、依然として方角が頼りだ。

猪の鼻ヶ岳山頂に到着した、というより確認をした。三等三角点は確かに皆さんの眼下にある。14:10

画面中央、朽ちた標識が三角点にヒモで結ばれている。標識から判読できるのは宝殿ヶ岳五〇八米である。旧山名だそうだ。

下山路は山頂から東に、そして北に下る踏み跡をたどる。二か所ほど躊躇したが無事宝殿林道に、ホッと安堵の溜息が皆さんの口に出た。14:47

林道はそのまま今朝通過した鎌掛峠に至る。振り返ると先刻まで見通しの無い藪の中を、手探りで登った猪の鼻ヶ岳の山頂が見える。

音羽集落に戻って来た。15時台のバスには間に合いそうもないので、めずらしくのんびりしたフィナーレを楽しみながら歩いて行く。

バス待ちに、サツキ寺といわれるお寺の縁側をお借りする。皐月と砂利、敷石だけの簡素な庭に暫し寛ろがせてもらう。浄土宗雲迎寺と書かれた無住寺てある。上音羽バス停16:14に乗車。

バスの車窓から写された近江鉄道日野駅、看板に板の剥がれが痛々しいが逆にレトロな明るさが見られる。日野こそ会津若松城92万石の大大名にまで上り詰めた蒲生氏郷の郷里である。

 今回は24回目のベーシック登山である。毎回、秋田リーダーの継続的なリードで参加者の人気は高い。「ただりーダーと一緒に楽しく歩くだけ」というシンプルな趣向が、なおよろこばれているようである。さて、ピンチヒッターを務めてみれば、猪の鼻ヶ岳という奇妙な山名である。東隣は綿向山(1110m)、南の谷はシャクナゲ渓谷という、いってみれば猪の鼻ヶ岳はどちらの訪問者からも敬遠される不遇の山である。ところがこれがまた私共には好ましく思われるのだから、EPEは結構なクラブである。

 音羽城跡の存在は地図を見るまでは知らなかった。戦国大名蒲生氏郷の系譜はここにあると知れば、なるほど周囲の景色は一変して見える。近江の広大で豊潤な平地を眺め、背後に宝殿山(猪の鼻ヶ岳)控えた音羽城の光景は、不遇などとは無縁の大地である。ワクワクした気持ちを抑えながら、たとえ踏み跡が失せた藪山でも、その存在を確かめずにはおられない楽しみがある。これがベーシック登山に適合したものかどうか、参加者の皆さんにお尋ねしたいところである。

 シャクナゲ渓谷の値打ちは、むしろ帰宅後に湧いてきました。石楠花の群生はいつでも見たいときには見られるという気持ちが登山者の心底にあるが、それは今の私には不適合な思いだと悟らねばならない。即ち見れるときに見て楽しむ、そして素直に感動する。その心得が肝要だと自ら戒めています。

記:紀伊埜本(節) 写真:大石